- 川崎ピアノ教室講師が、独断と偏見でお送りする -
ピアノ 初心者講座
No.007 〜 精神論でも、気持ちは意外と伝わるのかもしれない 〜
鍵盤の弾き方は、強い、弱いだけでは無いと思う。(後編)
さて、ピアノ初心者講座、第7回目は、前回の続きとなります、「鍵盤を弾き方は、強い、弱いだけでは無い(後編)」です。
前回キーワードとなっていたのが、音量は「p」。だけど気持ちは「f」です。です。
これは、人間の日常にも同じようなことがあると思います。
例えば、腹が立った時、声を張り上げて怒る人もいれば、表情はあまり変わってないものの、心の中でメラメラと怒りが沸き上がっている用なタイプの人もいると思うのですが、今回のキーワードは、後者の方に似ているかもしれませんね。
作曲家という職業をしていると、あくまで音量はPだとしても、その小さな音量の中に、深い悲しみの気持ちを込めて演奏して欲しい場面に遭遇します。
そんな時は、譜面に、「doroloso(悲しげに)」などと記載したりもするのですが、やはり人間感じかたは様々ですし、どうも納得のいく緊張感のある音で演奏して頂けない時もしばしばあります。
わたしが、納得のいかない表情をしていると、演奏者の一人が、僕と他の演奏者に向かって、「要はもっと悲しげに弾くってことでしょ?」と、その場を簡単にまとめてくれたのを覚えています。
彼はきっと、わたしの曲の意図を感覚で掴んでくれたのだと思います。それに対し、他の演奏者は、感覚でなく、具体的な音楽的部分に焦点をあてていた訳です。
両者の違いは、どちらが優位という訳でもなく、本当にどちらも大切なことだと思っています。
ここからここを「P」で、こっからクレッシェンドをかけて、この部分で「f」になり etc...
なんて、もの凄く緻密に音楽を構築したからといって、人の心を打つものには鳴り得ないですし、
一方で、気持ちだけは立派かもしれませんが、音の間違いだらけのめちゃくちゃな演奏をされても、ちょっとひいてしまう。
つまり、技術的な部分と、精神的な部分のバランスをうまく保つべきだとわたしは思います。実際には、
まず鍵盤に向かった段階で、その譜面やフレーズのもつ意味や背景を、自分なりに考えてみることで、ただの音の集団だった楽譜を、実際のStoryのように捉えて考えてみるなり。
その上で、今度は実際に鍵盤を弾いて音を出すわけですが、仮に「p」と書いてあったって、弾き方は本当にさまざまです。
軽く押す。そーっと押す。優しく押す。押すというより触れる。ゆっくり落とす etc..
これが、いわゆる技術面だと思います。
でもどうでしょう? 人間は感情豊な生き物ですから、頭にイメージさえしっかり持っていれば、自然とそうなるものです。もしそういった音が出ないというであれば、コントロールがうまくいっていないのでしょう。妙に力が入ってしまっていたり、イメージよりも技術面で頭がいっぱいになってしまっていたり。。
そんな時は、残念ながら練習するしかありません。より豊なイメージをもって、より思い通りの音に近づけるには、練習あるのみですね。練習によって技術面にある程度余裕を作ってやることで、脳みそをイメージや感情部分に使用できるわけですから、避けては通れない訳ですが、音楽の本当の楽しみは、乗り越えたその先にあるのではないでしょうか??
鍵盤の前に座って、鍵盤を弾くその初めの音を弾く時に、その鍵盤にどれだけの想いを込められるか?
そんな精神世界の話のようにも思いますが、弾き手の気持ちが鍵盤に伝わるという考えを、信じ抜けるか抜けないか? ここがポイントなんじゃないか?なんてわたしは思います。